「子供の矯正って、何歳くらいから始めたらいいですか?」
よく聞かれます
新学期になると、学校の歯科検診でも“不正咬合”を指摘されることがあるかもしれません。
本題に入る前に、まず、
矯正歯科治療において「1期治療(早期治療)」や「2期治療(本格治療)」という言葉を耳にされたことがあるでしょうか
「1期治療」は、まだ乳歯があるお子さん(3〜11歳くらい)に対して、バランスの良い顎の成長を促し、良好な咬み合わせが形成されるよう誘導する治療です。この時期は成長発育期であり、歯も生えかわっていきますので、歯1本1本の細かい位置の調整というよりは、比較的単純な装置で、歯列(歯並びのアーチ)や、顎の骨の大きさ・位置をコントロールして、永久歯ができるだけ良い環境で生えてこられるよう準備することがメインとなります。
一方、「2期治療」は、全ての歯が永久歯に生えかわってから行う矯正歯科治療(12歳くらい〜)で、皆さんがよく目にされるような、歯の表側あるいは裏側から“ブラケット”と呼ばれる装置を貼って歯を動かしていく方法や、マウスピース型の装置を装着して歯を動かす方法などがあります。 大人の矯正治療と同じですね
ここでは、歯の位置や角度などを細かく調整して、最終的な歯並びと咬み合わせを確立していきます。
治療の目標は、これまでのブログで何度もお示ししてきた通り、
・審美性 ・機能性 ・安定性 です。
さて、本題に入りましょう。
「子供の矯正歯科治療を始める時期」についてですが、
まず、お子さんのお口の中を見てみて、歯が全て永久歯に生えかわっているようであれば、ほとんどの場合いつでもスタートできます。ブラケット装置などを用いたいわゆる2期治療(本格治療)を行っていきましょう。
では、乳歯が残っている場合、いわゆる1期治療(早期治療)は、いつから開始すればよいのでしょうか??
「 早ければ早いほどよい」
いいえ、必ずしもそうではありません
大切なのは、“最も治療効果が期待できる時期を見極め、適切な時期に開始すること”です
小児の不正咬合にはさまざまな原因があります。
- 歯列(歯並びのアーチ)に問題があるもの
- 骨格(顎の大きさ・位置)に問題があるもの
- 舌やお口の周りの筋肉に問題があるもの
- 指しゃぶりなどの習癖(しゅうへき)によるもの など。
また、歯の生えかわりの状態や顎の成長にもさまざまなステージがあり、不正咬合の状態もお子さんによってさまざまです。
それぞれの状態を総合的に判断して、用いる装置を選択し、最も治療効果が期待できる時期を見極めることが大切です。もちろん、すぐに治療を開始した方がよい場合もありますし、「この歯が生えてから」とか、「顎の成長が始まるまでもう少し待って」など、少し観察期間を設けてから開始した方がよい場合もあります。
その“時期”を逃さないためには、やはり、ご自身で判断する前に、一度専門の先生に診察してもらうのがよいでしょう
西岡矯正歯科医院でも、例えば、4年生のお姉ちゃんと2年生の弟くんが初診相談に来られた時に、「お姉ちゃんはしばらく経過観察。全て大人の歯に生えかわったら2期治療から始めましょう。」「弟くんは、次回検査をして1期治療を始めていきましょう」、などというパターンもよくあります。
親の立場からすると、せっかく忙しい中、時間を割いて初診相談にも行ったのだし、成長していく我が子を見ていると、「しばらく経過観察」と言われるよりは、すぐに何か処置をしてくれる先生の方が良いように思えるかもしれません。 ・・・お気持ちはわかります。
しかし、矯正学的観点からすると、必ずしもそうではないのです
先日も、初診相談に来られた親御さんに、「もう少し経過観察をして適切な時期を待ってから治療を開始しましょう」とお話しました。きちんと根拠を示してお話したところ、とてもよく理解してくだり、僕の説明に納得して治療方針にご賛同いただきました。実は、ここへ来る前に、別の医院で、「矯正治療は早ければ早いほどよいので、治療をすぐに始めましょう。」と言われていたそうです。このお子さん、治療を開始したら、僕が責任を持って必ずきれいに治そうと思います
矯正歯科治療は、以前のブログでもお話したように、ドクターによって、知識、技術、考え方などがさまざまであるのが現状です。是非、きちんとした説明を受けて、ご自身やお子さんが最も納得した先生に治療をお願いしましょう
それでは最後に、1期治療と2期治療の流れを模式図で表します。
1期治療と2期治療が、矯正歯科治療の最終目的である
・審美性 ・機能性 ・安定性
を達成するための一連の流れにあることがわかるかと思います
そして、これも僕がいつもお話させていただくことですが、子供・大人にかかわらず、治療前にはきちんと検査・分析・診断を行い、明確な治療目標を定め、それに到達するための治療計画をたてることが、責任ある矯正歯科治療においては必須です。そして、治療終了時には、その治療目標が達成されたかどうか、きちんと評価しなければなりません。
子供の矯正歯科治療も、もちろん大人と同様、
Evidence-Based Medicine 根拠に基づいた医療 であることが大切です