最近、お子さんの矯正歯科治療を考えている親御さん、あるいはご自身の矯正を考えている方とお話をする中で、矯正歯科治療について、僕らがまだまだ伝えていかなければならない事が多いな、と反省させられます。
矯正治療は決して安い治療ではありません。ですから、患者さん自身もいろいろな情報を持って、納得した上で治療を受けていただければいいなと思います。
そこで今日はまず、「矯正歯科治療で何がどう良くなるの?」って話をしてみようかと思います
矯正歯科治療の目標は、ただ歯並びをきれいにするだけではありません。
大きく分けて3つの目標に向かった治療計画をたてます。
- 審美性(歯並びを良くする。顔立ちを美しくする)
- 機能性(よく咬める(かめる)ようにする)
- 安定性(綺麗になった歯並びを長く維持する)
まず1番目の『審美性』についてですが、良い歯並びとは、写真のように、歯がきれいに並んでいることはもちろん、上下の歯の中央が一致している、左右対称であるなどが求められます。
また、歯と唇、歯ぐきとの関係も大切です。スマイルをした時に、上の歯の先端を結んだラインが下唇に沿っており、なおかつ上の歯全体が見えるようになると魅力的なスマイルになります。
また、美しい顔立ちを判定する方法の1つとして「エステティックライン(E-ライン)」というものがあります。これは、1954年にアメリカの矯正歯科医であるロバート・リケッツにより発表されたもので、横顔において鼻のてっぺんと下顎の先を結んだ直線のことです。
日本人において美しい口元は、このエステティック ラインに対して、上唇は1~2mm後方に、下唇は直線上にあると考えられています。
写真の症例のように、歯の位置を動かすことによって、顔立ちも変わっているのがわかります。
次に、『機能性』の話です。
見た目だけでなく、歯の本来の目的である咬むという行為が十分にできなければいけません。よく咬めることによって、美味しく食事をとることができ、健康で幸せな人生を歩むことにつながるのです。
そのためには、上下の歯すべてが均等に接触し、また歯によって下顎の動きを妨げないように歯並びを整える必要があります。
写真のように、上下の歯の山と谷がきちんと咬んでいる状態へ治していきます。
実は、デコボコの歯並びをまっすぐにする技術よりも、この、上下の歯をきちんと咬ませることの方が、より高い知識・技術・経験が必要です。
残念なことに、以前別のところで矯正治療を受けてデコボコは治ったけれどよけい咬めなくなった、とか、よけい出っ歯になった、ということで、患者さん自身や、相談を受けた歯医者さんから再治療を依頼された経験が少なくありません。そのような場合、最初の状態よりも難症例になっていることも多いのです。
最後に3つ目の『安定性』です。
せっかくのきれいな歯並びも数年で崩れてしまうようでは意味がありません。そのためには、無理のない位置に歯を移動する必要があります。最初に十分な検査・診断を行って、骨格にあった位置に歯を移動することが必要です。
さて、矯正歯科治療について、少しは役立つ情報を提供できたでしょうか?
矯正歯科治療を受けた患者さんからは、「笑顔に自信が持て、よく笑うようになった」「歯磨きがしやすくなって、虫歯にならなくなった」などと嬉しい言葉をもらいます。
矯正治療に興味はあるけれど、少し敷居が高い・・・、いろいろ不安、という方も、思い切って初診相談に行かれるとよいかもしれません。当院を含め、最近は初診相談が無料の病院も多くあります。初診相談に行ったからと言って、その医院で治療を開始しなければならないということはありません。
矯正歯科治療は長いお付き合いになる治療ですから、むしろ、いろいろなところで相談をされて、最もお子さんやご自分に合う、信頼できる先生を選ぶことが大切です