「矯正歯科治療を行う時に抜歯は必要ですか?」
よく聞かれます
僕ら矯正歯科医も歯科医ですから、できるだけ歯は抜きたくないという気持ちは同じです。特に、健康な歯はできるだけ抜きたくない
例えば、下の絵のように歯並びがデコボコの場合を考えてみましょう。これらの歯をきれいに並べようとするとスペースが足りなくなってしまう・・・という話は耳にされたことがあるかもしれませんね
では、スペースを作るために、やはり抜歯は必須なのでしょうか??
「抜く歯は・・・そうですね。よくあるパターンのように、小臼歯(前から4番目か5番目の歯)を上下左右1本ずつ、合計4本!!といきましょうか」
・・・いやいや、ちょっと待ってください
僕は完全なる非抜歯論者ではないのですが、
あくまで、あらゆる検査資料から綿密に分析して、本当に必要であればその分だけ抜歯をするという考えです。
「必要である」というのは、以前のブログでも紹介した、矯正治療の目標(審美性・機能性・安定性)を達成するために「必要である」ということです。
ですから、抜歯が必要かどうかの判断は、必ず治療開始前の検査・分析によって行います。(矯正治療開始前の検査・分析については、1/11のブログを参照。大切な内容です)
歯を並べるスペースが確保できるかどうかを判断する時、まず以下のことを考慮します。
① 一番後ろに残されているスペースを使えないか?
⇒ 一番後ろの歯をさらに後ろへ下げることで、数ミリ程度のスペースを確保することができます。しかし、見てわかるように、確保出来るスペースがあったとしても、それには限度があります。
② 歯並びのアーチを広げられないか?
⇒ 歯並びのアーチが狭い人の場合、アーチの形を広げて距離を稼ぐことでスペースを確保できることがあります。
しかし、上下の歯の噛み合わせや顔つきのバランスを考慮しないでむやみにアーチを拡大することはできません。
例えば、前方向へアーチを広げ過ぎると、『歯のデコボコは治ったけどなんだか口元がもっこりして前より出っ歯になったぞ』という結果になりかねません。エステティックラインを思い出してください。口元がエステティックラインより大きく外側へ出てしまいます。
また、歯を支えている外側の骨は非常に薄いので、横(外)方向へ歯を動かし過ぎると、歯の根っこが骨から露出して痛みが出たり、最悪の場合、歯の神経が死んでしまったりすることがあります。
①、②で確保できそうなスペースを考慮してみても尚、スペースが不足すると判断された時に初めて抜歯を検討します。
以前、「欧米では抜歯なんてあまりしないと聞きました。」と言われた方がいらっしゃいましたが、欧米人と日本人では骨格が違いますので、やはり、きちんと検査・分析をして、日本人(というか、患者さん個人)に合った治療計画をたてなければなりません。
では、どの歯を抜歯するのか??
いずれかの歯を抜歯しなくてはならない時、小臼歯を抜歯するという考えは、残された歯の移動量や、歯を動かす際の固定源、あるいは残された歯の機能的問題を考えると、理にかなっていると思います。だからこそ、矯正歯科治療において、小臼歯が抜歯されるケースが多いのでしょう。
しかし、最近では、新しい治療法の登場により、必ずしもそうとは限らなくなってきました
『歯科矯正用アンカースクリュー』という小さなネジを、治療期間の間だけ歯ぐきに埋め込むことにより、歯を動かす際の固定源をあらゆる場所につくることが可能となりました。
(歯科矯正用アンカースクリューに関しては後日詳しく説明する予定ですが、麻酔も入れて、僕はいつもだいたい1本5分以内で処置を完了しています。抜歯にくらべると全く痛みのない処置です。)
その結果、健康な小臼歯以外で、すでに治療をしてしまっている歯、例えば、神経を取っていて、将来的に長持ちしそうにない歯があれば、それを優先して抜歯するという選択ができるようになりました。
以前は、そうすることで治療が困難になったり、治療期間がぐんと延びたりしていましたが、歯科矯正用アンカースクリューのおかげでそうした問題が解決されてきました。
ですので、分析の時点で、どの歯を抜歯するかを決める時には、虫歯治療専門の先生や、患者さんのかかりつけの先生とディスカッションして決定することもよくあります。せっかく矯正歯科治療をして、きれいで機能的な歯並びにするのですから、一生その状態を保っていただけるよう、将来的な見通しも考慮しなければなりません。
矯正治療における抜歯については、ドクターによってさまざまな意見があるのも事実です。患者さんによっても、なにがなんでも抜歯はしたくないという方もいらっしゃるかもしれません。
そのような場合、私達ドクターは、抜歯をしなかった場合にどのようになる可能性があるかを、十分な根拠(分析データ)を示しながら説明する必要があると思います。
そうしなければ、「デコボコは治ったけれどよけい出っ歯になった、とか、咬めなくなった」などという、患者さんにとって思いがけない結果になってしまう場合があるからです。
また、反対に、抜歯をする際にも、なぜそこの歯を抜歯する必要があるのかを十分な根拠(分析データ)のもとに説明をしなければなりません。根拠のない抜歯は絶対に行ってはいけません
患者さんも、少しでも不安や疑問に思うことがあれば、思い切ってたずねてよいのです。そこでしっかりと納得のできる回答をしてくれる先生でなければ、長い治療期間において信頼関係は保てないでしょう。
西岡矯正歯科医院、明日から2日間(2,3日)は休診となっております。ご予約・お問合せは、ホームページから承っております。