よくあるご質問
Q 5. 学校検診で不正咬合と指摘されましたが、すぐに受診したほうがよいですか?
Q 7. 矯正歯科治療と歯に人工物を被せて歯並びを改善する方法との違いは?
Q 8. 歯の裏側につける装置など目立たない矯正装置があると聞きましたが?
Q11. 筋機能療法(MFT)、予防歯科治療(クリーニングや歯石除去等)、ホワイトニングのみの受診はできますか?
歯とその周囲の歯槽骨の間には歯根膜という組織があります。この歯根膜が、歯と歯槽骨をつなげる役目も果たしているいるわけですが、歯に力を与えると一方の歯根膜は圧迫を受け、反対側の歯根膜は牽引されることになります。
歯根膜の働きによって、圧迫側の歯槽骨には、破骨細胞(骨を吸収する細胞)が並び、歯槽骨を吸収します。吸収してできたわずかなスペースに歯は移動します。一方、牽引側の歯槽骨には、造骨細胞が並び、歯槽骨を追加生産します。
このような、歯槽骨の”吸収”と”新生”が繰り返し起こることで、硬いはずの骨の中を歯が動くのです。
つまり、歯の周囲の歯槽骨・歯根膜が健康であれば、子供はもちろん大人のかたでも歯を動かすことは可能です。ですから、虫歯等で神経をとった歯(失活歯)も動かすことが可能です。
しかし、残念ながら、どんな装置や方法を使用しても、治療期間が極端に減少することはありません。
歯の移動は、Q1.であるように、矯正力による歯根膜の圧迫・牽引に基づく歯槽骨の代謝で起こります。このサイクルを繰り返すことにより、矯正歯科治療を進めていきます。ということは、歯槽骨の”吸収”と”新生”のサイクルのスピードによって矯正歯科治療のスピードが決まるということです。言い換えれば、歯槽骨の代謝スピード以上には矯正歯科治療を早くすることはできないということです。
もし、歯に強い力を加えたとしても、歯は動かないだけでなく歯やその周りの組織にダメージを与えかねません。
弱い力で無理なくゆっくりと歯を動かすことが、結局、良い矯正歯科治療の一番の近道です。
遺伝の影響
受け口・生まれつき歯が足りない・歯の形の奇形等は遺伝の影響が考えられています。
歯が並ぶスペース(顎の大きさ)の問題
顎の大小が、歯が並ぶスペースの問題を引き起こします。つまり、
歯に対して顎が大きい ⇒ すきっ歯
歯に対して顎が小さい ⇒ 凸凹
虫歯の影響
特に、乳歯の虫歯は永久歯の歯並びに悪影響を与えます。
乳歯はその下の永久歯のための生えてくる方向、位置を決める道案内役を担っています。乳歯の虫歯を放置しておくと、永久歯が正しい位置に生えてこれず、歯並びや咬み合わせが狂ってきます。
生活上の悪い癖
歯並びには、その周囲の軟組織(舌・唇・頬など)による影響を強く受けます。
たとえば、
口呼吸 ⇒ すきっ歯・出っ歯・交叉(こうさ)咬合
指しゃぶり ⇒ 開咬・出っ歯
下唇を咬む ⇒ 開咬・出っ歯
頬杖 ⇒ 下顎のゆがみ
当医院では、悪い癖が歯並びに影響していると疑われる患者さんには筋機能療法(MFT)を行っています。「筋機能療法(MFT)」をご覧ください。
体への影響
虫歯や歯周病になりやすい
歯並びが悪いと歯磨きが隅々まで行き届かず、また、唾液の流れが損なわれて歯の汚れが溜まりやすくなるため、虫歯や歯周病になりやすいと言われています。虫歯や歯周病は、歯を失う大きな原因となります。
全身への負担
よく咬めることは健康の基本です。食べ物をよく咬めないと、胃の負担は増え、唾液量も少なくなるため消化力が弱くなります。さらに、咬み合わせがずれていたり、奥歯がないと、肩こりや頭痛の原因となることがあります。また、奥歯を咬みしめることによって瞬発力や集中力が高まると言われています。
最近の研究では、ものを咬むと脳の認知力を司る領域の活動が活発になることがわかり、疫学調査でも歯がある人は歯のない人と比べて認知症になる割合が低いことが明らかになりました。
歯が折れたり、粘膜を傷つけやすい
歯が凸凹だと、歯が頬の内側や歯茎に当たって傷をつけてしまうことがあります。転んだ際に出っ歯の場合のほうが上の前歯が折れるまたは抜けるリスクが高くなります。また、内側に傾いた歯が繰り返し舌を傷つけると舌癌のリスクが高まるとも言われています。
歯科治療が難しくなる
歯並びが悪いと、歯や歯茎の治療が必要となった場合にきちんとできないことがあります。
心への影響
歯並びや口元が常に気になる
悪い歯並びは顔全体の印象に悪影響を与え、自分の外見が気持ちの負担になるためコンプレックスを感じることがあります。なかには、そのことで勉強や仕事も手につかないとといった人もいます。
対人関係で消極的になる
歯並びや口元でその人の印象は大きく変わります。悪い歯並びのせいでその人の気分や意思とは関係なく他人に誤解されることもあり、そのため対人関係で消極的になることがあります。
また、悪い歯並びは発音にも影響をおよぼし、不明瞭な発音は他人に良い印象を与えません。
ストレス解消ができない
咬むことでストレスが解消できるという説があります。スポーツ選手が試合中にガムを咬むことによって、リラックスし、集中力を高めているのもその一例でしょう。
特に、乳歯列期・混合歯列期(3~12歳くらい)のお子様は成長発育の盛んな時期ですので、歯並びだけでなく、顎の骨の成長を利用したり、逆に成長を抑制したりして、骨格的な改善も可能な場合があります。
大切なのは、最も治療効果が期待できる時期を見極め、適切な時期に開始することです。
矯正歯科専門医の立場よりアドバイスをいたします。詳しくは、「初診相談のススメ」をご覧ください。
Q1にあるように、歯の周囲の歯槽骨・歯根膜が健康であれば、子供はもちろん大人のかたでも歯を動かすことは可能です。ですから、虫歯等で神経をとった歯(失活歯)も動かすことが可能です。
また、全体的な矯正歯科治療はもちろん、1~数歯のみを動かす「部分的な矯正治療」も行っています。成人の矯正歯科治療では、虫歯や歯周病が問題となることが多いですが、当医院は一般歯科医院の先生と連携して治療しますので安心して治療を受けていただけます。
ちなみに、私の経験では現在まで、3~80歳と幅広い年齢の患者さんを治療しました。
これは、私たちがめざす歯そのものを大切にすること、また本来の矯正歯科治療の目的(審美性・機能性・安定性)(「治療目標」参照)とは根本的に異なります。
矯正歯科治療は時間がかかりますが、心身ともの健康増進を目的とするならば、ご自分の健康な歯をゆっくり無理なく動かすことによってあなたの悩みを解決することをオススメします。
という方には、歯の裏側(舌側)の装置=リンガルブラケットを使った矯正治療がオススメです。外側には装置がほとんどつかないので他人の目を気にすることはありません。以前は、表側の装置と比較して、治療結果が悪い、治療期間が長い、違和感が強いなど多くの問題がありましたが、近年は、材料の発達、治療工程の工夫などにより表側からの装置と変わりなく治療できるようになりました。発音がしにくくなることがありますが、装置のスリム化により通常数日で慣れます。
また、目立たない装置としてマウスピースをつかったものもあります。これは、従来の装置(ブラケット、ワイヤー)を用いず、透明なマウスピースにて歯を移動させるため外見上ほとんどわかりません。ご自分で着脱できることが大きな特徴で、食事や歯磨きもいつも通りできます。ただし、適応症に限りがありますので、治療可能かどうかご相談ください。
矯正歯科治療は弱い力で無理なくゆっくりと目的の位置に歯を移動させます。したがって、頻繁に力をかけすぎると歯に対しては悪影響を及ぼします。また、逆に通院が滞ると治療期間は延長してしまします。適切な通院ペースを守ることが、歯に対して優しく、なおかつ効率的で治療期間の短縮に繋がります。
また、経過観察や保定期間中は3-6か月毎の通院をしていただき、お口のなかの状態を管理します。
詳しくは、「治療の流れ」をご覧ください。
- 最初は矯正装置による不快感、痛み等がありますが、数日~数週間で慣れることが多いです。
- 歯の動き方には個人差があるため、予想された治療期間が延長する可能性があります。
- 装置の使用状況、定期的な通院等、矯正治療には患者さんの協力が非常に重要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
- 治療中は、装置が付いているため歯が磨きにくくなります。むし歯や歯周病のリスクが高まりますので、丁寧に磨いたり、定期的なメンテナンスを受けたりすることが重要です。また、歯が動くと隠れていたむし歯が見えるようになることもあります。
- 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることがあります。また、歯ぐきがやせて下がることがあります。
- ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
- ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
- 治療途中に金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
- 治療中に「顎関節で音が鳴る、あごが痛い、口が開けにくい」などの顎関節症状が出ることがあります。
- 様々な問題により、当初予定した治療計画を変更する可能性があります。
- 歯の形を修正したり、咬み合わせの微調整を行ったりする可能性があります。
- 矯正装置を誤飲する可能性があります。
- 装置を外す時に、エナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
- 装置が外れた後、保定装置を指示通り使用しないと後戻りが生じる可能性が高くなります。
- 装置が外れた後、現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす可能性があります。
- あごの成長発育によりかみ合わせや歯並びが変化する可能性があります。
- 治療後に親知らずが生えて、凸凹が生じる可能性があります。加齢や歯周病等により歯を支えている骨がやせるとかみ合わせや歯並びが変化することがあります。その場合、再治療等が必要になることがあります。
- 矯正歯科治療は、一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。
もし、不安に思うことや心配なことがあればお気軽にご相談ください。
お子様で舌・唇・頬などのお口の周囲の筋肉のバランスの悪さが原因で不正咬合が惹起している場合、筋機能療法(MFT)のみで不正咬合が改善することがあります。成人であっても、正しい咀嚼・嚥下・発音・呼吸を獲得することは健康なお口の維持につながります。ただし、多くの場合、MFTのみでは形態の改善は起こらず矯正治療が必要となります。
また、予防歯科治療(クリーニングや歯石除去等)は、健康な歯やその周囲の組織を維持する基本です。予防処置は継続することが必要です。
お口を健康で美しく見せるには歯の色も重要です。予防歯科治療によって歯に付着したステイン(着色汚れ)を除去すると歯の色はかなり改善しますが、歯そのものの色が暗い色であるならばホワイトニングが有効です。
いずれにしても、あなたのお悩みをお気軽にご相談ください。
しかし、矯正歯科治療の前後で虫歯や歯周病に対する処置が必要な場合は、一般歯科医院の先生にご紹介し、連携して総合的な治療を行いますので、ご安心ください。